momoの雑記帳

日々の出来事やおすすめのものを紹介します

19歳の私

寒い朝でした。
まだ、薄暗く周りはツンと寒くて指から足までが震えていたのを覚えています。
6畳ほどの畳の上にダウンとリュック、祖母が編んでくれたニットの帽子を被って私は立っていました。部屋はぐちゃぐちゃに巻かれた段ボールの箱が4つ。ひとつは洋服、ひとつは調理器具、ひとつは教科書、ひとつはアルバム。私の19年間が詰まって、蓋をされていました。こんなことをするつもりはなかったのです。
家主を起こさないようにそっと部屋を閉め、一度ではかからないような部屋の鍵をかけ、5分ほどのバス停へ歩きます。歩いているうちに、涙が出てきました。なんとも言いようない気持ちになり人に見られないように深く下をむいて泣きました。



小学生の頃です。母に怒られた時は必ず眠れなくなっていました。何をしてもチェックが入り、怒られてしまうのです。
こんなに怒られるんだから自分はいらない子なんじゃないか。川で拾ってきたと言っていたのは本当だったんじゃないか。兄弟みたいに勉強ができないから見捨てられるんじゃないか。ぐるぐる悩んでいると、そのうち少し空いた襖の暗がりから誰かが見ているような気がして怖くなってくる。あれ?あそこってあんなに空いていたっけ?窓の鍵はかけたっけ?あの黒いのなんだろう・・・泣


眠れない。
でも明日は学校だから寝ないといけない。
でもでも、眠れない。
そんな時はそーっと襖を開けておばあちゃんのそばへ行きます。
部屋に入ると
「おばあちゃん、おばあちゃん」祖母を何度か揺すって
「はぁい」小さく返事が聞こえると素早く潜り込みます。
あの時の冷たい私の足はおばあちゃんが寝ていたあったかい場所をすぐ探っていました。
おばあちゃんのタンスの匂いとぎゅっと抱きしめてくれる優しさが怖さを消してくれました。
それでもまだ布団の中で泣きべそをかいていると、おばあちゃんは必ず言うのです。
「ももちゃん、辛いことがあったらねェ、おばあちゃんのところへ来たらえいよ。おばあちゃんと一緒に寝よう。」
いつも言うのです。私が宿題をしたと嘘をついて怒鳴られた時も、友達と喧嘩して掴み合いになった時も、おばあちゃんに生意気な口を聞いた時も必ず言うのです。
「ももちゃん、辛いことがあったらねェ、おばあちゃんのところへ来ぃ。おばあちゃんと一緒に寝よう。」
下を向いているその時に、おばあちゃんと一緒に眠りたかったなと何度も思ったのです。



まだ日が上らない時間に来たバスに乗りました。結果として、私の気持ちは誰にもあげることはできませんでした。
でも、あの時の気持ちを幸せにしてあげようと思えたのです。